遺産分割

生前贈与がかえって迷惑?!生前贈与のデメリット・メリット・注意点

子供や孫のために「生前贈与」…ちょっと待った!メリット・デメリットをしっかり押さえてから判断を

生前贈与とは、生前に子どもや孫に財産を贈与することです。

親や祖父母が持っている財産を、先に子どもや孫に対して贈与しておくことで、遺産相続をするときの相続財産が少なくなります。
同時に相続税を軽減できるため、一般的には相続税の負担を軽減するために節税対策として行われます

また、贈与をする側にとっては、「自分が生きているうちに、あげたい人に、あげたい財産を渡すことができる」「自分の死後に親族間のもめごとを回避できる」などのメリットも含まれます。

国としても「若い世代に早く資産を渡すことで経済効果も生まれる」ことを見込んで、生前贈与に関わる税の優遇措置を複数設けています

生前贈与のメリット

メリット①節税効果が高い

生前贈与は節税効果が高いことが大きなメリットとして挙げられます。

  • 暦年贈与
  • 相続時精算課税制度
  • 教育資金
  • 住宅取得資金贈与
  • 配偶者控除

それぞれ詳細を解説します。

暦年贈与

110万円×相続人の数×10年の控除が利用でき、簡単にいうと相続人の数が多いほど、大きな節税効果を期待できます

相続時精算課税制度

60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の推定相続人である子、または孫に対して財産を贈与した場合に、2500万円の限度額に達するまで何度も控除が出来る制度です。
一度に多くの財産を渡すことができるので、将来値上がりなどが見込まれる財産などは、この制度で贈与するのが効果的かと思います。
ただし、一回でもこの制度を使うと110万円の非課税贈与が使えないので、注意が必要です。

教育資金

祖父母から教育資金として金銭の贈与があった場合、信託受益権または金銭等の価額のうち、1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、金融機関等の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより、贈与税が非課税となる制度が使えます。

住宅取得資金贈与

平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。ただし、条件があるため、事前に確認が必要です。

配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
ただ、配偶者が死亡した時の二次相続に対応できないなどの欠点もあるため、住宅を贈与するような場合は、専門家に一度相談することをおすすめします。

メリット②遺産を渡す時期や相手を自由に選べる

生前贈与は、いつ誰に何を贈与するのか、贈与時期や相手を選べるため、土地や不動産、有価証券といった「価額が普遍でないもの」を渡したい場合、将来的に値上がりがある可能性が高いのであれば、事前に贈与することで、節税に繋げやすくなります
また、相続人間のトラブルで多いのが、誰がどの遺産をもらうのかという部分が大きいため、相続時のトラブル回避につながります。

生前贈与のデメリット

デメリット①土地や不動産の贈与では課税対象になる

生前贈与は贈与税の節税には繋がりますが、不動産を誰かに譲る際は必ず不動産の「登録免許税」や「不動産取得税」などが発生します。
そのため、不動産の生前贈与を行うなら、節税効果が見合っているかを判断する必要があります。

デメリット②税務署に認めさせるのが難しい

生前贈与があったことを税務署に認めさせることが難しいというデメリットがあります。
以下のようなものが認めさせる材料となるので、行う際はきちんとチェックしておきましょう。

  • 受贈者(もらった人)が財産を受け取ったと認識していること
  • 書類上で贈与したと証明できること
  • 受贈者が贈与税の申告をしていること
  • 受贈者が自分で通帳やなどを所持していること
  • 受贈者が贈与者からもらったお金などを使っていること

デメリット③相続時点から3年以内の贈与は無効になる

被相続人が亡くなる3年以内に贈与された財産は相続財産として、相続税の対象になってしまいます。

生前贈与を行う際の注意点

生前贈与とみなされない行為がある

受取人を指定した生命保険は、その受取人固有の財産となるため、生前贈与とはなりません。
ただし、満期等により死亡する前に保険金を受領することとなれば、生前贈与にあたります。

また、扶養義務者へ生活費、教育費用等を充当することは生前贈与にはあたりません。

例えば、毎年100万円を相続人の一人に10年間生前贈与を行った場合、毎年110万円未満の贈与なので非課税となるわけではなく、税務署に1000万円の贈与とみなされ、贈与税がかかるケースがあります。

また、死亡する3年前の贈与は、相続税の対象となるので、注意が必要です。

生前贈与でよくある失敗例とは

暦年贈与は110万円まで非課税ですが、10年、20年と継続した贈与を行うと贈与税がかかるケースがあります。
また、相続時精算課税制度を利用して生前贈与を行う場合、下記の失敗例も多く発生しておりますので、注意が必要です。

  1. 利用した年度で税務署に申告をすることを失念した
  2. 不動産を贈与したが、贈与した年よりも不動産の価値が下がっており結果的に相続時精算課税制度を利用することによるデメリットが勝った
  3. 現金を受領したが使用してしまい、結果として被相続人の死亡後に相続税の支払いが不可能になった

自分で行うのが不安な場合は、専門家へご相談することがオススメです。

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