相続手続きの期日、うっかり過ぎてしまった…延長できる?対処法を確認しよう

相続手続きには、役場にする手続き、法務局にする手続き、運輸局にする手続き、金融機関にする手続き、税務署にする手続き……と、幅広くあります。

一方で、親が亡くなったときは、通夜、葬儀、お墓の選定など、やらなければならないことが多く、落ち着いて相続のことを考える余裕がなくなる人も少なくありません。
さらに、相続手続きには必要書類があり、これらの取得にも非常に時間がかかります
このような状況で、相続手続きの期限を過ぎてしまった場合どうなるのでしょうか。

今回は、うっかり期日を過ぎてしまったときの対処法を解説します

相続手続きで「期限があるもの・ないもの」

相続手続きには、期限があるもの、ないものがあります。
しかし、全ての相続手続きには、共通して提出する書類がありますので、進めるのであれば一気に進め方が相続人の負担が少ないでしょう。

①預貯金の手続きには期日がある?

実は、銀行の預貯金の相続手続きには原則手続きには期限はありません
また、銀行側は被相続人が亡くなったことを確知しませんので、連絡をしなければ口座の凍結、相続手続きのお知らせなど連絡が来ることはありません。

ただ、銀行の相続手続きには期限はありませんが、10年間以上口座を使用していない場合、その口座は休眠口座に入るので、何もしなくても大丈夫というわけではありません。

銀行の相続手続きには相続人の印鑑証明書が必要となりますが、印鑑証明書は3ケ月以内の期限があります。

銀行の預貯金の相続手続きには原則手続きには期限はありませんが、銀行以外の相続手続きを進めるのであれば、銀行の手続きも一緒にしてしまった方が、その後が楽になるでしょう。

②不動産の手続きには期日がある?

現在のところ、預貯金と同様、不動産にも相続手続きの期限はありません。

しかし、令和6年4月1日より、3年以内の相続登記が義務化されます。これにより、正当な理由がないにもかかわらず相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科されることがあります。

不動産の手続きが遅れたときのデメリットとは

相続登記をしないと、相続後に発生するあらゆる不動産の手続きができません

例えば、相続した不動産を売る場合には、売買を前提として買主に名義を移す必要がありますが、名義を移すためには前提として被相続人から相続人に名義を移しておく必要があります。
つまり相続登記をしておかないと、すぐに売買をすることができなくなるのです。また、相続登記を放置しておくと、相続登記そのものを行うことが困難になります。

相続人が複数いる場合には、遺産分割協議を行い、相続人を決め相続登記を行いますが、その登記申請の際に、遺産分割協議を行った証明として、遺産分割協議書と印鑑証明書を提出します。
遺産分割協議は、相続人全員の合意及び遺産分割協議書への全員の実印での捺印が必要になりますが、協議をおこなうことや捺印をもらうことは、時間が経てば経つほど難しくなるでしょう。
相続人の誰か1人でも亡くなれば、その相続人から相続した新た相続人を協議に加えて捺印を貰うことが必要になります。
つまり、時間が経過すればするほど、相続関係が複雑になり、手続き書類の作成や取得が困難になるのです。

③自動車の手続きには期日がある?

自動車についても、相続手続きの期限はありません

ただ、自動車の場合は、相続による名義変更をしておかないと車検を通すことができませんので、期限がないからといって放置しておくと、すぐに自動車が使用できなくなります。

また、相続人が自宅で相続自動車を使用する場合は新たに車庫証明を得る必要があり、その際は名義変更をしていないと車庫証明が取得できませんので、相続による名義変更をしておく必要があります。

④税金の手続きには期日がある?

相続税及び準確定申告については、期限があります

具体的な期限は、相続税が相続人が相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内
準確定申告は相続人が相続開始を知った日の翌月から4カ月以内です。

期限に余裕があるように見えますが、必要書類の準備、財産の評価を行っていると、あっという間に過ぎます。

また、これは申告期限+納税期限なので、相続税であれば、数百万円から数千万円を準備しておく必要があります。そのため、決して期限的に余裕があるとは言えません。

相続税の申告準備に伴い、銀行の預貯金解約や相続不動産の売却が必要になるため、併せて進める方がスムーズでしょう。

相続手続きの期限を超えてしまったら

親族が亡くなったにもかかわらず、理由があって熟慮期間(相続の承認又は放棄をすべき期間)内に相続の承認もしくは放棄をすることができない場合には、この期間を延長するため、家庭裁判所に申立てをすることができます。

相続放棄や限定承認をする場合は「熟慮期間」がある

相続人が相続放棄や限定承認をする場合には、原則として「自己のために相続の開始があったこと(被相続人が亡くなったことと、それにより自分が相続人となったこと)を知った時」から3か月以内に家庭裁判所でその旨を申述しなければならないとされております。

この期間を「熟慮期間」といいます。

相続放棄とは

被相続人が亡くなると、その相続人は被相続人の財産や債務を全て引き継ぐ(相続する)ことになります。被相続人が借金等の債務を負っていた場合には、相続人はその債務も引き継ぐことになります。

相続人が被相続人の借金などの債務を引き継ぎたくないときは、「相続放棄」をすることにより、その債務を引き継がないことができます。

ただし、相続放棄をすると、被相続人の債務だけでなく、被相続人が有していた財産(土地や預貯金等の権利)も引き継がないことになります。

限定承認とは

被相続人の借金などがどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合は、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務を引き継ぐことができます。

これを「限定承認」といいます。

熟慮期間の延長手続をするには

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをする必要があります。なお、申立ては必要書類を郵送することによってもできます。

熟慮期間延長の申立てをしないまま、期日が過ぎてしまった場合はどうなる?

熟慮期間の延長の申立てをせず、この期間内に相続放棄又は限定承認をしなかった場合は、「単純承認」をしたものとみなされます。単純承認とは、借金等の債務の有無に関わらず、被相続人の財産を全て引き継ぐことになります

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