遺産分割協議とは?必ず行う必要がある?
遺産分割協議とは、相続人たちによる、財産分配のための話し合いです。被相続人による遺言書がない場合などには必ず行わなければなりません。
しかし、「この期限内に行わなければいけない」という制限はないので、遺産相続が始まればいつでも自由に開始することができます。
ただ、遺産分割協議自体に期限はなくても、「遺産相続に期限のあるもの」があり、遺産分割協議の話し合いで遺産の分配方法が決まらなければ、家庭裁判所が行う遺産分割調停に移る必要が生じます。それでも話しがまとまらなければ「審判」によって遺産を分割することになります。
遺産分割協議に対する注意点や、第三者の適切な関わり方について考えてみましょう。
遺産分割の流れ
(参照:3分でわかる遺産相続の手続き)
遺産分割協議書を作成する
【押さえたい注意点】
- タイトルに「遺産分割協議書」と記載
- 被相続人は誰か
- 被相続人は「いつ」死亡したのか
- 遺産分割協議には「誰が参加したのか」
- 「誰が」「何の」財産を取得するのか
- 相続する財産の「具体的な内容」と「その割合」
- 不動産の記載は登記簿謄本や権利証で確認して正確に記載
- 協議の「日付」、相続人の「住所」を自筆で署名
- 実印による押印は相続人「全員分」を用意
- 相続人全員が「各自一通ずつ」原本を保管
- 預貯金、車、株式等の遺産や債務はもれなく記載
- 代償分割の場合、代償金額と「支払期限」を明確に
遺産分割協議で注意すること
遺産分割協議では、法律的な権利について知らないことがあると不利益を受けてしまう場合があります。
そのため、各相続人が本来受け取ることが出来る法定相続分について、あらかじめ知っておくことがとても大切です。不安な場合は、専門家の助言を受けながら遺産分割協議を行うとよいかもしれません。
他には、以下のような点について注意して進めましょう。
注意点①遺産分割協議は、必ず相続人全員で行うこと
必ずしも一堂に会して話し合う必要はありません。居住地が遠方や多忙などで集まれない場合は、全員が合意している内容の協議書を郵送などの持ち回りで署名・押印する、という形をとっても良いでしょう。
注意点②遺産分割協議に関わる「第三者」は公平性をもつ
第三者が公平性をもって遺産分割協議に関わる場合、相続人同士の感情的な対立を回避して、結果的に各相続人にとって満足できる遺産分割が期待できます。
一方で、公平性をもてず、第三者が特定の相続人の利益を優先させようとした場合、他の相続人からの反発を招く可能性があり、結果的に遺産分割協議が難航して協議がまとまらない場合があります。
第三者は客観的に物事を判断できるという長所もありますが、相続人の配偶者などが参加すると多くの場合トラブルとなるため、避けたほうが良いでしょう。
遺産分割は、相続人が納得さえしていれば、法律上は不平等であっても良いもの。「法律やきまりがすべて」ではなく、相続人間の合意のもとで決定されます。
第三者は相続人たちの感情や想いまでを完全に共有することは困難です。同情心や損得勘定などから分割内容を判断してはいけません。
注意点③分割協議は少ない回数で終わらせる
何度も話し合いをすれば、もともと合意していたことまで、崩れかねません。出来る限り少ない話し合いで合意を見いだしましょう。
注意点④あとから遺産が見つかった場合など、万が一の場合に備えておく
後から遺産が見つかった場合はどのように分配するかを決めておくと、再度遺産分割協議をしなくて済みます。
後から借金が見つかる場合もあります。万が一に備えておけば、記載漏れのような軽微なトラブルがあっても、改めて協議書を作成する手間が省けます。
注意点⑤遺産分割協議はやり直しをすべきではない
遺産分割協議は、一度決めたことであっても、「相続人全員の合意」によりやり直しをすることは可能です。
しかし、いざ相続人の合意のもと、遺産分割協議の解除をしてやり直した場合、税務上は、いったん有効に成立した遺産の帰属を、「新たな合意により変更したもの=すなわち、贈与・交換に該当するもの」として、原則として贈与税や譲渡所得税が課税されると定められています。
このような税務リスク・コストが生じるため、遺産分割協議はやり直しをすべきではありません。
単に遺産分割協議の成立後に新たな遺産が見つかった場合は、新たにその財産のみについて遺産分割協議を行えば良いのです。
そういった万が一の場合に備えて、遺産分割協議書に協議書に列挙されていない軽微な財産については、「特定の相続人に帰属する」という規定を設けておくことが通例です。
遺産分割前に遺産を処分してしまったら
相続人の1人が分割前に推定相続分を処分した場合は、遺産分割協議にはその譲り受けた第三者を必ず参加させなければなりません。
相続人の一人が無断で遺産を処分してしまった場合は、他の相続人は、勝手に処分した相続人に対して、自分たちの相続分を返却するよう、相続回復を請求する調停や審判を家庭裁判所に申し立てることができます。
ただし、第三者に売却等をしてしまった場合、第三者の権利を保護するため、遺産分割協議の前であったことを知っていたかどうかにかかわらず、不動産登記がされてしまっている場合は、返却するよう請求することはできません。
遺産分割協議でのよくある質問
相続人が未成年の場合は?
法定代理人(通常は親権者)が遺産分割協議に参加します。
法定代理人も相続人である場合は、互いに利益が対立することになるため、家庭裁判所に特別代理人の選任申立を行います。未成年者である相続人が複数いる場合は、それぞれ別の特別代理人が必要です。
形見分けをしたい場合
形見分けとは、故人の愛用の衣類や時計等、身の回りの物を分けることを指します。形見分けは自由に分割できます。