遺産分割協議書とは
まず遺産とは、亡くなった方が残した財産のことです。財産には、現金や不動産といったプラスのものばかりではなく、借金や未払いの税金、住宅ローン・カードローンも含まれます。
そのため、遺産分割協議書を作成する前に、そもそも「相続するべきかどうか」を検証することが重要です。もちろん理由によっては、マイナスの財産を相続することもあるかもしれません。
特別な事情がない場合は、遺産を相続をしない「相続放棄」も選択肢に入ってきます。
遺産分割協議書は、遺産を相続すると決めた場合、亡くなった方が遺した財産を、相続人でどう分けるかを取り決める際に使用する書類です。
相続対象にならない遺産
亡くなった方の財産の中でも、相続の対象にならないものもあります。その中でも生命保険金は、多くの方が遺しているケースが多いです。
生命保険は受取人が指定されているため、基本的には遺産分割の対象にはなりません。ただし、生命保険金を受け取ると、その事実を考慮され、場合によってはその他財産の相続額を減らされてしまう可能性もあります。
また、一身専属的な権利や義務も相続の対象からは外れます。
たとえば生活保護の需給や、年金の受給、国家資格などです。そのため、これら該当しない財産を除いたうえで、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割の方法
遺産分割の方法は3つあります。
現物分割
遺産そのものを、現物の形状や性質を変更(分割)することなく相続する方法をいいます。
例えば、Aさんは不動産を、Bさんは現金を、Cさんは株式を相続するという様に、1人1人がそれぞれ現物を相続することで、公平性を極力担保することが多くあります。
代償分割
これは、現物で公平に分けることが難しい際に行われます。
例えば不動産を相続する場合、土地や建物を残したいときには、誰かが引き継ぐ形になります。
一方で、引き継げなかった相続人は、不公平感が拭えません。そのため、土地や建物を相続した人が、他の相続人に対して、現金などを渡す形を取ります。
代償分割は、現物は残したいが、相続人全員が同程度の相続をしたい場合に、選択されるケースが多いです。
換価分割
財産を売却し、現金に換えてから分割する方法です。代償分割と同様で、現物で分けることが困難な不動産や株式の相続などでよく行われます。
3つの分割方法ご紹介しましたが、実際にはどれか1つというよりは、現物で分けられるものは現物で分け、それ以外の資産を代償分割か換価分割で分けるというケースが一般的です。
遺産分割協議書を作成する理由
相続後の相続人間での争いを防ぐため
相続後、「やっぱりあの財産が欲しかった」「事情があってやっぱり要らない」といったように心変わりすることもあるでしょう。その度に分割方法を見直したり、揉め事になっては大変です。
そのために、「いつ」「誰が」「何を受け取るのか」を合意する文書を作成するのです。これらの書類は、もめた際の裁判の証拠にもなります。相続人同士で合意が取れており、それぞれが損をしない様に作成することが大切です。
財産の名義変更時に利用するため
不動産や銀行預金など、遺された財産の名義を変更する際に、遺産分割協議書の提出が求められます。
この際には相続人の実印が必要など、細かい決まりがあるので、ご注意ください。
遺産分割協議書が不要な場合
相続人が1人の場合や、すべての財産の相続人が遺言書によって決まっている場合、そもそも分割する対象の財産が無い場合は、遺産分割協議書は不要です。
ただし、相続人が1人の場合にも注意点があります。
自分では1人だけと思っていても、戸籍上は相続人が他にいる可能性もあるのです。
例えば、「実は亡くなった方が再婚で、再婚前に子供がいて、その事実を知らなかった」などが意外にもよくあるケースです。
また、「財産がない」と思っていても注意が必要です。
例えば「知らずの内に借金をしていた」「実は払い終えていないローンが残っている」というケースも、残念ながらよくあるケースです。この場合、相続したくないのであれば、遺産分割協議書ではなく、相続放棄が必要になってきます。
遺産分割協議書を作成するために必要な書類
下記書類が必要になります。
- 被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本(除籍・改製原戸籍・現戸籍)
- 被相続人の住民票の除票と戸籍の附票(登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合に戸籍の附票も必要)
- 相続人全員分の戸籍謄本
- 相続人全員分の印鑑証明書と実印
遺産分割協議書の作成の仕方
実は規定のひな形はない
必要事項がすべて網羅・記載されていれば、実は決められた書式や、用紙はありません。
ネットで少し調べて見るだけでも、参考となるサンプルが多くあるので、参考に見たり利用したりするのは良いでしょう。
記載すべき項目
- 亡くなった方
- 相続人全員
- 財産の内容
- 署名捺印
これらに「遺産分割協議書」とつけて、相続人の人数分を作成し、保管すれば完成です。
ただし土地は、所在や地番、地目、地積が必要だったり、建物は家屋番号、種類、構造、床面積が必要だったりと細かい注意点は多々あります。
作成時のポイント
財産は曖昧な記載ではなく、「具体的に特定できる情報」や「誰が」「何を「どのように相続する」かが分かる書き方をする必要があります。
遺産分割協議書の利用が必要なケース
預貯金の払戻請求
亡くなった方の預貯金を払いもどす際には、金融機関から遺産分割協議書の提出が求められます。
基本的には死亡の事実が分かると悪用を避けるため、金融機関は当該預貯金者の口座を凍結し、引き出しができない状態にします。たとえ親族であっても、基本的にはすぐの払戻ができません。
例外的に遺産分割が成立する前に、預金残高のうち、自分の法定相続分の1/3の額又は150万円の、どちらか低い方の金額を払い戻せる場合もあります。
不動産の相続登記
不動産を所有していた方が亡くなった際に、不動産の名義を相続人のものに変更することを、相続登記といいます。
相続登記を行わない場合、不動産の売却ができない、融資を受ける担保にできないなどの不都合が生じます。
この不動産登記を行う際に必要なのが、「遺産分割協議書」です。
株式の相続
亡くなった方が株式を所有していた場合、相続をするには遺産分割協議書が必要となります。
非上場の株式の場合は、その企業自体に相談する必要もあります。
ちなみに、相続税の計算では、上場株式は、以下の4つの価格のうち最も低いもので評価します。
- 相続日の終値
- 相続日が属する月の毎日の平均終値
- 相続日が属する前月の毎日の平均終値
- 相続日が属する前々月の毎日の平均終値
ただし、遺産分割協議においては、実際に分割を行う時点に近い時点の株価を参考にすることもあります。また、株式の分割に関しては、株式をそのまま分割する方法と、株を売却して得た利益を分割する方法があります。
遺産分割協議書の提出と流れ
遺産分割協議書を作成するためには、相続人全員の合意が必要です。そのため、まずは相続人を全員特定する必要があります。戸籍謄本を請求し、出生時まで遡るのが一般的な方法です。
全員が特定できたら「誰が何を相続するのか」又は「相続放棄するのか」を決めて、相続する人全員が合意します。全員の合意につながらない場合は、遺産分割調停や、家庭裁判所で争うケースも発生します。
また、遺産分割協議書は、適宜目的に応じてそれぞれの提出先に提出することになります。
- 預金口座の払い戻しは金融機関へ
- 不動産の名義変更は法務局へ
- 相続税の申告は税務署へ
相続人が未成年の場合
未成年の場合は、基本的には親が代理人となり、遺産分割協議を進めていきます。
しかし、親も相続人の場合は、利益相反となり、代理人にはなれません。
その場合、特別代理人を家庭裁判所に申し立てる必要があります。子供が相続する場合は、同時に親も相続人になるケースも少なくないため、注意が必要です。
遺産分割協議書は自分で作れる?
遺産分割協議書は、規定の書式や制限もないため、個人でも容易に作成できます。
一方、分割協議書の作成にあたり、相続財産の洗い出しから、適切な資産評価(株式や不動産)を調べ上げ、最終的には相続人「全員の同意」のもとで分割方法を決めたうえで書類作成しなければなりません。
書類を作成する前段階での、調査や相続人とのコミュニケーションに手間と労力が大きくかかるものなのです。
さらに、遺産相続をめぐって相続人同士で仲違いする事態に追い込まれてしまうケースも多くあります。
「相続財産調査・遺産分割書」に関する無料相談会について
遺産分割協議のなかでよくあるお困りごと
- 故人の財産が「どこに」「いくら」あるのか調べるのに大変
- 遺産評価額が知りたい
- 相続人同士で円満に遺産分割の話をするために、きちんと財産目録を作成したい
- 相続税がどれくらいかかるかのか心配
遺産分割協議書にまつわるご相談は、一度専門家に相談してみてください。
「相続財産調査・遺産分割書」に関する無料相談会
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