もしもの時は予測できないもの 「介護」について考えよう
公益財団法人生命保険文化センターが行った「2018年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護経験がある人の割合は、29歳以下から40~44歳までは4~7%でした。しかし、45~49歳になると13.4%。50~54歳では20.2%となっています。
また、介護した相手で最も多いのは「自分の親」(9.5%)で、次いで多いのが「配偶者の親」(3.8%)。子どもが40代なら親は60代〜70代。
親の老後に向けてどのような備えをしておくべきでしょうか?
親世代と子世代の認識のズレ
アクサ生命の「介護に関する親と子の意識調査2019」によると、40〜50代が帰省で親と話したいこととして、「親の体調、健康」が60.5%とダントツ1位でした。
また、親の介護経験がない40〜50代が予想する親の介護開始年齢は84歳で、自分自身が何歳まで働きたいかという就労希望年齢は67歳でした。
さらに興味深いのは、40〜50代の子ども世代が「介護の場所」だと思っているのは「介護施設」ですが、60〜70代の親が「介護して欲しい」と思っているのは「自宅」という結果です。
この調査では親世代に対して、「もし、介護施設を提案されたら?」という質問もされており、愛着のある自宅から離れることに抵抗を感じながらも、子どもたちへの負担を考えると「やむをえない」という回答が得られています。
施設か自宅の選択は、親の意向を確認してから動いていては、万が一の場合に十分に検討ができず、対応が遅れ、後悔を生みやすくなります。
「なかなか親に聞けない」「親がまだ決められないと言い困っている」のであれば、在宅介護と施設での介護、それぞれの費用を調べて、参考までに親に提案してみましょう。子ども世代にとっては選択の目安になりますし、親に話をするきっかけになって良いかもしれません。
公的介護保険を使えば自己負担は多少は軽減されますが、自宅で最期まで介護することを想定すると、自宅の改修費用が必要になるだけでなく、介護をする人自身の精神的負担が大きくなります。最期まで自宅で過ごしたいと思っていても、施設や病院へ移らなければならなくなる場合も少なくありません。嫌な場合は、「何が嫌なのか」どうすれば「嫌ではなくなるのか」を、しっかりと親子で話し合い、理解し合うことが重要です。
介護費用はどちらが負担?
40〜50代の子ども世代への「介護を担うのは誰か」という質問に対し、一番多かったのは「自分」という回答でした。
ただ、子ども世代が「何歳まで働きたいか」という就労希望年齢が67歳だったように、これからは60歳定年で退職し、ゆっくり老後を過ごすことは難しい時代です。
年金問題も浮上し、老後資金も不安なため、「できるだけ健康で長く働きたい」というのが、40〜50代の子ども世代の本音であるはずです。
また、介護と就労が同時に起こる場合、大変なのは時間のやりくりだけではありません。
遠距離介護の場合には、旅費がかさみます。
介護度が低い場合は通い介護でも可能ですが、重くなったらどうするのか?
親が子どもの家の近くに引っ越すのか?
家を改修して同居するのか?…など、
事前にしっかりと話し合っておく必要があります。
子育てや就労をしながら、さらに親の老後を考えるのは負担かもしれませんが、介護期間は父親で最大14年、母親で12年程度と予想されていることを考えると、最初から長期戦を覚悟して計画を立て、備えておくべきです。
40〜50代の子どもの世代は、子どもの教育資金と自分の老後資金を並行して準備しなければいけません。
子どもに教育費をかけつつ、自分の老後資金の準備、そしてさらに親の介護費用を負担する…というのは、不可能に近いでしょう。
このことを親世代が理解していれば良いですが、理解していないケースも少なくないため、できれば介護費用については、親が元気なうちに、どちらが負担するのかをはっきりとさせておくべきです。親子でお金の話はしづらいものですが、しっかりと確認しておくべきものは確認しておかないと、共倒れになりかねません。
さらに、「誰がいくら負担したのか」ということから、相続の際に他の兄弟姉妹と争いに発展しかねないのです。
介護は親子の大きな問題
同調査では、介護を実際に経験した人に対して、どのようなことに困ったのかも聞いています。
結果は、「自分の精神的な負担」が最も多く、次に「自分の仕事への影響」、「自分の健康、体力」が続き、「自分の自由時間の減少」、「介護費用」など、介護の負担は、お金の面だけでなく、精神面での負担もかなり大きいことが分かります。
実際に介護を経験していない人の場合、親の介護に対する認識は、「自分ごと化」が進んでいないため、親との話し合いもしていないという人が大多数です。近年、最低賃金は上昇しているようですが、社会全体の景気が上向いているとも、正社員の賃金が右肩上がりになっているとも思えず、将来が不安な状況が続いています。
そんな中、40〜50代の子どもの世代にとって、親の介護費用の問題は大きいです。
元気なうちに親子で話し合い、早めの準備をすることで、しっかりとした資金計画を立てられます。
まずは話し合うことで、親子の安心につながるのです。
介護以外にかかるお金や負担、親子で確認しておきたいこと
介護のこと以外では、保険契約などを含む財産、個人間の金銭の貸し借り、交友関係の把握などをしておき、万が一親が亡くなった際には誰に連絡するか、遺産の分割に不明なものがないかなどを確認しておくことが必要です。
親世代は、自身の個人情報、医療などの往診歴、亡くなった後の葬儀の形態やお寺・お墓の希望、交友関係、相続財産などの情報をエンディングノートとしてまとめ、子どもと情報を共有すること。
そのうえで遺言を作成するのであれば、遺言が存在することを相続人へ伝えておきましょう。