相続対象は、家族構成や状況で変わる
多くの場合、父親が亡くなれば、その遺産の相続人は配偶者である母親と子どもです。
一方、どの関係柄まで相続人としての資格があるのか、相続対象は何人いるのか…、相続対象は家族構成や状況によって大きく変化します。
万が一のときに備えて、自分の家族がどのケースに当てはまるのか知っておくと良いでしょう。
自分は法定相続人?分割割合は?家族構成別に、よくある「7つのケース」に分けて解説
相続ケース1:配偶者と子ども2人と他界した子の子(孫)
被相続人には子が3人おり、そのうち1人はすでに亡くなっているが、子ども(孫)がいるケースです。
この場合、配偶者と2人の子と亡くなった子の子、つまり孫が相続人(代襲相続人)になります。被相続人の父母が健在であっても、父母に相続権はありません。
相続ケース2:再婚相手(相続開始時の配偶者)との間に実子と連れ子がいる
被相続人は再婚しており、再婚相手との間に実子が1人、再婚相手に連れ子が1人いるケースです。
この場合、被相続人が生前、連れ子を扶養、同居していたかどうかではなく、養子縁組をしていたかどうかが重要になります。
連れ子と養子縁組していた場合、相続人は配偶者・実子・連れ子となります。連れ子と養子縁組をしていない場合には、相続人は配偶者・実子となります。
相続ケース3:被相続人に両親が同じきょうだいと、異父・異母きょうだいがいる
被相続人が未婚で子どももいない場合、被相続人のきょうだいが相続人になり、そのきょうだいと父母が同じかどうか(=異母兄弟か否か)で相続分が決まります。
例えば、被相続人に異母きょうだいの兄と、両親とも同じ弟がいた場合、異母きょうだいの兄の相続分は、両親とも同じ弟の相続分の2分の1になります。
相続ケース4:3人の子どものうち1人が相続放棄。相続放棄した子に子(被相続人の孫)がいる
相続人である3人の子どものうち、1人が相続放棄した場合、残り2人が相続人となります。
相続放棄をすると、「最初から相続人ではなかった」と扱われます。そのため、孫は相続人とはなりません。
そのため、相続放棄した子どもの子(孫)が代襲相続人になることもありません。
ただ、相続放棄をしていても、相続税の計算の上では法定相続人として数えられます。相続放棄をした人は当然、承継する財産がないので、相続税の申告義務はなくなります。
一方、相続放棄をしても、生命保険金・死亡退職金などの「みなし相続財産」は受取ることができます。そのため、みなし相続財産の基礎控除額を超えて受取った場合には、相続税を納めなければならないので注意が必要です。
相続ケース5:内縁の妻とその子がいる
内縁の妻とその妻との間に子がいるケースは、民法のルールにより次のような取り扱いになります。
内縁の妻
法律婚による配偶者ではないため、相続人になれません。
ただし、被相続人に他に法律婚による配偶者や法定相続人がいない場合、特別縁故者として被相続人の財産を取得する可能性はあります。
内縁の妻との間にできた子
被相続人が生前に認知、もしくは遺言認知を行った場合、または内縁の妻が死後認知請求の訴えを起こして認められた場合には、その子は実子として相続人になります。
認知がなければ相続人にはなれませんが、内縁の妻と同じく特別縁故者として被相続人の財産を取得する可能性はあります。
相続ケース6:相続人に行方不明者がいる
相続人のうちに行方不明者がいるケースは、相続人の戸籍の附票等から住所を探し、直接訪問や手紙などで連絡をとる努力をしなくてはなりません。どうしても連絡がつかない場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申し立てを行います。
(*※死亡が確定的であれば失踪宣告を申し立てる事もあります。)
家庭裁判所の許可が下りたら、不在者財産管理人が行方不明者である相続人の代わりに遺産分割協議に参加することになります。
相続ケース7:相続人もおらず、遺言書もない
このケースは、家庭裁判所に申し立てることにより、相続財産管理人が選任されます。選任する旨が2か月間公告された後、相続財産管理人が相続人や相続債権者などを公告で探します。
この公告を2か月行ってから半年経ってもなお相続人が現れなければ、相続人の不存在が確定します。さらに3か月の間特別縁故者の申立もなされなければ、遺産は国庫に帰属します。
また、被相続人に推定相続人になるべき配偶者や血族として相続権を主張する人が公告期間中に現れなかった場合、内縁の妻や養子縁組していない連れ子など、被相続人と特別の関係にあった者が「特別縁故者」として相続財産の分与を家庭裁判所に申し立てることができます。
申し立てが認められれば、特別縁故者は清算後に残った相続財産の全部または一部を取得することができます。
ないと思っていた遺言書があとから見つかった!こんなときはどうしたらいい?
①遺産分割協議を終えてから遺言書が見つかった
遺産分割協議をしたのに、思わぬところから遺言書が…!?
本当は存在していた遺言書の内容を知らないで、うっかり遺産分割協議を行ってしまうケースも少なく有りません。その場合、遺言書の内容を優先することが可能です。
仮に、その遺言書の存在と内容を遺産相続協議の際に知っていたとして、遺産分割協議で決まった内容とは違う決定をしていたと言える程度に重要なものであるときは、遺産分割協議で決まった内容を取り消すことができます。
遺言書による遺産相続に時効はありません。
遺言によらない遺産分割をしてしまった後に遺言書が出てきた場合は、遺言の内容に基づき、遺産分割協議を再度やり直す必要があります。
②遺言書が2通見つかった
遺言書が2通見つかる場合もあります。2通同士の内容が抵触する部分があれば、後に作成した遺言によって抵触する部分が撤回されたとみなされます。
つまり、日付が新しい方の遺言が優先されることになるのです。
もし、すでに遺産分割協議をしてしまった後に別の遺言書が見つかった場合でも、新しいほうが有効となり、新しい方の遺言に基づいて、遺産分割協議を再度行う必要があります。
参考:相続順位と法定相続分
遺言書がない、あるいは遺言書の指定が財産の一部のみの場合、遺言書による指定のない財産は民法に定める相続人(法定相続人)同士の協議により遺産分割します。
法定相続人は、配偶者および被相続人の血族のうち、民法で定められた次の順位で先順位となった人です。
【法定相続人の順位】
- 第一順位:直系卑属(子や孫)およびその代襲相続人
- 第二順位:直系尊属(父母や祖父母)
- 第三順位:兄弟姉妹およびその代襲相続人(ただし、代襲は1代までです)